領域概要
総括班:スマートナノ粒子の光科学
本領域「スマートナノ粒子の光科学」では、近赤外領域での強い光応答特性、高い生体適合性、偏光・スペクトル情報を介した多次元生体内計測などを実現する「スマートナノ粒子(Smart Nanoparticles)」の合成、評価、応用開拓に関する研究を展開します。そのようなスマートナノ粒子として、直径が原子数個分しかない極細金ナノ構造をターゲットとし、広いサイズ領域で極めて狭いサイズ分布を持つ安定な粒子合成法の確立、精密表面修飾法の開発、1粒子の分光スペクトル–形状同時計測、細胞内での1粒子分解分光イメージングの達成を目指します。スマートナノ粒子の近赤外光応答を単一分子で測定することで、粒子位置のみならず、その構造や相互作用を分光イメージング計測できるようになるため、細胞内の異方的構造の検出、局所的な力学的特性の定量、複数の生体分子間の距離・角度の推定など新しい多次元的モダリティが出現することを期待しています。本研究領域では、これらの将来的応用を見据え、スマートナノ粒子の実用的な合成・安定化を実現し、構造とスペクトルの相関を分子レベルで明らかにします。このような基礎・応用研究に基づき、スマートナノ粒子を舞台とする次世代ナノ科学の学理基盤を確立することが本領域の目標です。

A01:原子レベルで均一な標準スマートナノ粒子の合成と高機能化
A01班では、スマートナノ粒子の安定で再現性のある大量合成法を確立し、サイズや形状の揃った粒子の供給を可能にします。これにより、粒子の形状と光学応答との対応関係を精密に調べることが可能となり、ナノレベルでの構造情報の読み出しに向けた基礎を築きます。
B01:スマートナノ粒子プラズモン共鳴スペクトルの一粒子計測
B01班では、1粒子ごとの近赤外光吸収スペクトルを測定するための高分解能分光技術を開発します。これにより、粒子の組成、形状や周囲環境に起因するスペクトル変化をナノスケールで可視化し、スマートナノ粒子を生体内で応用した際に得られる光応答を理解するための基盤を確立します。
C01:スマートナノ粒子のバイオイメージング応用
C01班では、細胞内に導入したスマートナノ粒子を用いて、生きた細胞の中での構造変化や分子間相互作用をリアルタイムで非侵襲的に観察するバイオイメージング技術を構築します。これにより、例えば細胞骨格の変形や分子の動態、局所的な粘性や電場分布といった情報を、1粒子レベルで空間的・時間的に解像することが可能になります。